今回は、薪ストーブの煙突の話し。
室内のシングル煙突を自作で断熱二重煙突にしたら、ストーブの燃焼の状態がかなり良い方に変わったという、またまたマニアックな話です(^^;
1. 我が家の薪ストーブ
ウチの薪ストーブは、アイルランドのウォーターフォード社のアッシリングという機種で設置は2000年10月末。
それから毎冬活躍して今年で22シーズン目。
煙突は室内の2.2mがシングル煙突。そこから横に壁を貫通して室外へ。
室外は約3mの二重煙突(断熱材なし)という仕様で、設置した2000年当時は室内はシングル、屋外は二重煙突と言うのが標準的な仕様だった様に思う。
室内はシングルの方がストーブ本体に加え、煙突からの放熱もあってかえって部屋が温まって良いという考えが主流だった時代。
2. シングル煙突と断熱二重煙突
シングル煙突と二重断熱煙突は何が違うかというと、シングル煙突は金属板一枚の煙突で、二重断熱煙突は煙の温度をなるべく高温に保ったまま排気するために、煙突が二重になっていて内側と外側の煙突の間に断熱材を充填したもの。
我が家の煙突は、上にも書いた通り室内はシングルで、屋外は断熱材の入っていない二重煙突。
設置当時の2000年には、二重の断熱煙突なんて聞いたことなかったなぁ。
ネット検索で、
Q 薪ストーブの煙突は、すべて断熱二重煙突にすべきでしょうか。
(2012.12)
https://realestate.yahoo.co.jp/knowledge/chiebukuro/detail/1299439512/
という質問ページの回答の中にも、
2:中空二重煙突
たとえば、アンコールの場合は、煙突の口元から2.4mはシングル管でも大丈夫と、ファイヤーサイドはうたっています。
http://www.firesidestove.com/knowledge/planning/chimneyplanning.html
(2021.12月現在、さすがにこのファイヤーサイドのページは存在しません)
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ファイヤーサイドというのは、有名な老舗の薪ストーブの販売店ですが、今から10年ほど前の時点ではそこでさえ”煙突の口元から2.4mはシングル管でも大丈夫”と言っていた模様。
ところが近年、(10年ほど前からか?)室内の煙突も二重のしかも断熱煙突にした方が良いという情報をちらほら見かける様になった。
薪ストーブ業界で有名な”かわはら薪ストーブ本舗”の「春夏秋は冬を待つ季節」というブログの記事によれば、
<ブログからの引用>
煙突が二重断熱煙突だと、排気温度が高いまま煙突を抜けてくれるので、強い勢い(早い流速)で排煙される。
一方シングル煙突だと煙突から放熱してしまうので、排気温度が下がって、勢いが弱くなる(遅い流速)で排煙される。
そのため、後者は薪の燃え方がイマイチとなるのだ。
前者は効率良く燃えてくれるだけでなく、燃焼用の空気を絞ったり、煙突ダンパーを、よりたくさん絞ることができるので、同時に燃費が良くなる。
ファンを持たない薪ストーブは煙突の断熱性能が全てと言っても過言ではない。
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また、シングル煙突に関する書き込みには、
煤がたまりやすく、シーズン中に何度も煙突掃除が必要だ、
とか、
煤がたまり過ぎるとやがて煤に引火して煙道火災が起こる
など、の話しもある。
振り返って我が家のストーブを見てみると、煙突に煤がたまってシーズン中に煙突掃除が必要になる程でもなく、煙突掃除は年1回で問題ない状況ではあるものの、近年エアーを絞って焚くこともほとんど無く、時々灰の中に燃え残った炭があるなど燃焼(煙突のドラフト)がイマイチな感じがしないでもない。
これらの情報を見聞きするうちに、いろいろやってみたい性分の私は、我が家のストーブもより良い状態で燃焼する様に室内を断熱二重煙突にしようか?
という考えに至ったのです。
3. 二重断熱煙突は高い
薪ストーブを設置した時に感じたのは、煙突の値段の高さ!
ただの金属の筒なのに、我が家のシングル+二重煙突(断熱ではない)でもストーブ本体と同程度の費用。
室内のみを断熱二重煙突にしようとしても、我が家のは古い仕様のため現在の煙突の仕様と異なり屋外の現状の煙突と接続できない様で、そうなると屋外分も含め煙突全体を交換する必要があり工事費用も含めれば40~50万円程度の費用がかかる可能性も!
それはチョット、いや、だいぶ痛い。
4. 自作で二重断熱煙突
そこで、DIYで室内分を二重断熱煙突にできないかネットで調べてみると、やっている人がいるではないか!
世の中、自分が考えるのと同じようなことを考える人が必ず居るもんだ(^^)
部材を調べていると、良いものが見つかった。
まず、断熱材。
ニチアス【セラカバーS】直管 150mm 厚さ20mm×長さ1000mm
20mmの厚さで、ロックウール50mmの厚さと同等以上の性能を発揮という優れもの。
我が家の煙突はφ150㎜なので、これを巻いてφ200㎜のシングル煙突でカバーすれば二重断熱煙突が完成する!
煙突は、ホンマ製作所の 黒耐熱 ステンレス 直筒 φ200mmを2本連結で全長1,700㎜。
合わせて、耐震補強のため、黒 ステンレス 壁面取付金具 φ200mm用も購入した。
5. 施工
施行は断熱材セラカバーの効果確認も含めて2段階で実施。
まずはセラカバーSのみを巻いてみた。
外側をカバーするφ200㎜の煙突の長さが2本連結で170cmなので、1mのセラカバーの内の1本を70㎝と30㎝に切断。
切断はカッターナイフで簡単に出来た。
遠くから作業を恐る恐る眺めるまめ子 🐱
残った30㎝のセラカバーは横引き部分に巻いてみたところ、ピッタリの長さ(^^)
セラカバー自体は軽いものなので、煙突に巻くのも簡単で針金で仮止めして作業はアッという間に終わった(^^)
この状態で断熱化の効果を見るため、しばらく焚いてみた。
最初は、加熱されたセラカバーから出る接着剤か何かの臭いが気になったが、数日使っているうちにその臭いも気にならなくなった。
そして、明らかに以前とは違う効果を感じたので、次の段階である外側を金属の煙突でカバーする作業に移った。
まず、室内の煙突を外し、セラカバーを巻いて、φ200㎜のステンレス煙突をかぶせた。
と、言葉では簡単だが、室内の煙突を外す際にスライド煙突部分の固定ネジをはずして煙突を縮めながら壁とストーブから外さなければならず、少々苦労した。
また、煙突を定位置に戻す時にはスライド煙突部分のネジを締めてから二重断熱煙突部分を上にずらすのだが、そのネジを締めるために二重煙突部分を一旦下の方に下げる必要がある。その時に下方にある煙突ダンパーの取っ手が邪魔になることが判明。
このダンパーは15年ほど前だったか、DIY で取り付けたものだが、これがあると作業が先に進まないので、仕方なく煙突ダンパーは撤去せざるを得なかった。芝生の上に転がっている円盤と取っ手金具がそれ。
そして、いよいよ二重断熱化した煙突を元の定位置に戻すのだが、これが一苦労 💦
元の煙突に、断熱材とステンレスのφ200㎜の煙突2本の重さが加わって何しろ重たい(^_^;
嫁さんと力を合わせて室内へ持ち込み、ストーブの近くまで運び、
私が脚立に昇るまでの間
私「ええか?支えとってくれよ! 大丈夫か?」
嫁さん「うん。いける。 あぁ、きゃー、アカンかもしれん!」
私「もうちょっと頑張れ!」
などと言いながら、苦労して何とか煙突を定位置に戻すことに成功!
続いて耐震補強のための煙突支持金具の取り付け。
これがまた厚みのあるステンレス製で、結構重たい!
これも左右1本目のコースレッドをねじ込むまでは、嫁さんに金具を手で支えてもらいながら、しっかりした下地があるところを狙って固定。
作業が終わった頃には外はすっかり暗くなっていた。
その時、嫁さんがドスの効いた声で、かつおどけた感じで
「父さん! 分かっとるやろうなぁ。」
と一言。
私はすぐに、晩ご飯は作らんのやなと悟りました(^^;
こんな時に向かうのは、いつも”我が家の食堂”と呼んでいるスシロー。
6. 二重断熱煙突の効果
さて、苦労して出来た二重断熱煙突の効果はというと
1.明らかにガラスがくもりにくくなった
2.燃焼温度が上がりやすくなった
3.エアーを絞れる様になった
4.燃費はあまり変わらない感じ
1.については、以前はガラスの向かって左1/3位がくもりやすく燃焼中に時々フロントドアを開けて新聞紙などで拭いていたが、それがほとんどなくなった。
多少くもっても、炉内の温度が上がれば自然にクリアになる。これはかなり嬉しい!
2.について、巡航温度に達するまでの時間が感覚的に短くなった。かつ、今までと同じ薪の量でも温度が20~30℃程度高くなった。温度は煙突の付け根付近に付けたバイメタルの温度計で測定。
3.従ってエアーを絞っても巡航温度が維持される。
4.は一番期待したいところだが、感覚的には従来と余り変わらない感じ。でも、同じ薪の量で今までより高温で運転できるということは、燃費が良くなっているとも言える。
燃焼の様子は以下の通り
考えてみるに、煙突の温度が上がった事により煙突の引き(ドラフト)が強くなり、ストーブの二次燃焼(クリーンバーン)用のエアー、ガラス面に流れるエアーカーテンのエアーが設計通りに流れてうまく綺麗に燃焼するようになったと思われる。
これまでは、燃えにくかったり温度が低い時は、下の灰受け皿の扉を開けて炉内の下から多くの空気を入れていた。
それが、今回の改造でそれをしなくても十分に燃える様になった。
ストーブを使い始めた当初は、苦労して集めた薪を少しでも節約したくて、どうしてもエアーを絞ってチョロチョロ焚いていた。
そうすると、そこそこ炎は燃えても炉内の温度が十分に上がらず、煙突から煙が結構出ていた。
これは、可燃性のガスが煙突から煙として逃げている、即ち燃料を煙突から捨てているようなもの。
薪から出る可燃性のガスを炉内でしっかり燃焼させることにより、温度が上がり、排気も綺麗になり煙突に煤も付きにくい。
ストーブを正しく焚くためには、二次燃焼(クリーンバーン)や、エアーカーテンなどの正しいエアーのルートでエアーを十分供給しながら焚くことが大切であることと煙突の重要性を改めて再認識した。
7. 掛った費用
さて、今回の二重断熱煙突化に掛った費用は以下の通り。
断熱材セラカバーS 3,390円 × 2 = 6,780円
φ200㎜ステンレス煙突 910mm 6,440円×2=12,880円
ホンマ壁面取付金具 φ200㎜用 12,740 円
合計 32,400円
煙突部分のみと考えれば、19,660円
となった。
この程度の費用で、ストーブの燃焼状態が良くなり、かつ、室内煙突の耐震補強も出来て大成功‼
代表プロフィール

- むちゃくちゃ忙しい宝飾店の工房で10年の修行の後、独立。
ある二組のご夫婦との出会いをキッカケに、二人で作るマリッジリング(結婚指輪)のプログラムを始める。 お二人の大切な思い出と共に残る結婚指輪の手作りを全面的にサポートしています。
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