”優しい時間” これは、私が春日手作り市で悪戦苦闘していた2005年にフジテレビ系列で放送された倉本聰の脚本、北海道富良野を舞台に父と子の和解を描いたドラマの題名です。

 

そもそもこのドラマを見始めたキッカケは、新聞の番組批評コラムで
『薪ストーブが燃える喫茶店で・・・』
というのがあって、薪ストーブが出てくるドラマか!見てみよう、という感じで薪ストーブへの興味で途中の3話あたりから見始めたのです。

 

 

そのストーリーはというと・・・。

 

主人公の涌井勇吉(寺尾聰)は商社のニューヨーク支店長というエリートサラリーマンだったが、息子拓郎(二宮和也)の運転する車の事故で同乗していた妻めぐみ(大竹しのぶ)が亡くなり、それをキッカケに会社を辞め、息子の拓郎に絶縁を言い渡し、東京の家は処分。
妻の故郷である富良野で喫茶店「森の時計」を開いた。

 

めぐみの親友・九条朋子(余貴美子)がこの事を知り、勇吉には内緒で拓郎を父親の近くに置こうと美瑛にある陶芸窯「皆空窯」に見習いとして住み込みで就職させる。

 

拓郎は陶芸職人として真面目に修業に取り組み、勇吉は「森の時計」のマスターとして常連客に慕われ、近くにいながらお互いに近づけず、それぞれに人生を生きている。
「森の時計」の従業員の梓(長澤まさみ)は偶然拓郎と知り合い、彼が勇吉の息子だとは知らずに心惹かれてゆく。

 

時間をかけて父と子が少しずつ距離を縮めていくさまを、富良野の静かで美しい景色とともにつづるヒューマンドラマ。
主題歌は平原綾香の『明日』

 

 

一方、私はサラリーマン時代の後半10年余り、ある商品の海外市場開拓の仕事をしていてほぼ毎月アジアを中心に、時にはヨーロッパ、アメリカなどへ出張に出かけていました。
そんなサラリーマン生活を辞めて、指輪などを作る職人の道を選び修行の日々を送っていたのでした。

 

そこでこのドラマ。
ニューヨーク支店長を辞めて喫茶店の店主になった涌井勇吉と、仕事で頻繁に海外に出かけていた生活を辞めて職人を目指す自分を、またある時は黙々と陶芸に打ち込む拓郎と修業先である三扇ジュエリーで宝飾品を黙々と磨く自分を重ね合わせ、ドンドンこのドラマにのめり込んで行ったのでした。

 

このドラマの中で、とても印象に残っているシーンがあります。
それは第9話の中、拓郎と梓がファミレスで会っているシーン。
普通に見ればどうってことない1シーンですが、私の心に強いインパクトを与えたのです。

 

前にも書きましたが、修業時代の私の仕事は指輪やペンダントをリューターというハンドグラインダーを使って研磨剤をつけながら黙々とただひたすら磨くというもの。
磨きの摩擦熱で品物が持っていられない位熱くなり、指先の皮がひび割れて、そこに研磨剤が黒くこびりつき、硬くて汚い指先になりました。

 

 

そこで、先に書いた”優しい時間”の1シーン。
拓郎が梓がくれたと思ったお守りを
「これ、ありがとう」
と言って差し出した拓郎の指先。
爪の間が真っ黒だったんです!

 

陶芸で黙々と粘土をこね、汚れた指先。
物作りのために汚れた指先。
俺と同じだ!!

 

修行を始めてほぼ丸2年。
貯金は目減りをしていくし、商売もまだ軌道に乗らない時期でしたが、よっし、俺もがんばろう!!と思えた瞬間でした。

 

これを読んでくださっている皆さんには
「何でそんなシーンでそんな風に思うのか?」
と恐らく理解して頂けないと思いますし、もし自分が脱サラせず普通に仕事をしながら見ていたなら、このシーンは記憶にも残らなかったかも知れません。

 

夢の実現に向って頑張っているけれども、なかなか前に進めない厳しい現実に直面し、それでも何とか前を向いて頑張るしかない。
この先、どうなっていくのか不安を抱きながらのそんな状況の中、心が敏感になっていたのかも知れません。

 

そしてそこから前を向いて進む力を与えてくれた、私にとっては忘れられないドラマなのです。

 

次回 ”アート・クラフトフェスティバル in たんば” へ続く

代表プロフィール

春日井 利光
春日井 利光
むちゃくちゃ忙しい宝飾店の工房で10年の修行の後、独立。
ある二組のご夫婦との出会いをキッカケに、二人で作るマリッジリング(結婚指輪)のプログラムを始める。 お二人の大切な思い出と共に残る結婚指輪の手作りを全面的にサポートしています。
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