アート・クラフトフェスティバルinたんば (指輪職人への道-6)

前回は、心の支えとなったドラマ　”優しい時間”についてでした。
2005年6月に前々回の”春日手作り市”の最後に書いた表題のクラフト展への参加申し込みをしました。

これは、毎年秋に2日間にわたって兵庫県丹波市にある兵庫県立丹波年輪の里で開かれるもので、木工、陶芸他様々なもの作りをしている作家が出店販売をする催しです。

この参加申し込み用紙の中に、出店者名と共に工房名を記載する欄がありましたが、実はこの時はまだ工房の名前が無かったのです。
何か名前を決めなければいけないこととなり、このときに初めて工房南十字星を名乗りました (^_^)

工房の名前を決めるに当って、当初はこの仕事を始めるキッカケにもなった薪割り斧に関連した名前、例えば英語名でAXEなどを考えていましたが、ネット検索すると武器としての斧、悪魔の武器の類を連想するものが多数ヒットしたので、これはイメージが悪いなぁということでボツ。

もう一つの候補が、当初、制作のテーマとして選定したクロス（十字架）と、子供の頃から好きだった星の両方に関連するものとして、星座の南十字星を工房名とすることとしたのです。

そのうち工房の名前は何か決めないとなぁ、とは思っていたものの先延ばしにしていたところだったので決める良いキッカケにはなりました。

さて出店が決まり、万一の雨にも備えて購入したタープテントを持って開催日前日に場所取りに会場へ向かったのでした。

会場は広い芝生広場を中心に数棟の木工体験施設の建物が点在するところで、場所は自由に取り放題。
という訳で、芝生広場の一角に場所を決め、テントを設営しました。

そして第1日目のスタート。
私の隣に出店していたのは、岐阜県高山市から家族で来ていた陶芸一家。
商品の陶器類をテントの前の芝生にまで広々と広げて店開きをしておられました。

百まではいかないかもしれませんが、数十ある出店者の品目をザっと見たところ、椅子や木のおもちゃなどの木工、ついで陶芸が多くこの2つで8割以上を占めていた感じ。

例によって私の様なシルバーアクセサリーは見かけませんでした。

お客さんの数もそこそこありました。がしかし、売れません o(*≧Ｏ≦)ゝ
周りの出店者を見ると、ポツリポツリ程度の売れ行きですが、そんなに盛況という感じでもありません。

しかし、出店者が口々に
「このフェスティバルはいい! いい出会いがある。」
と言っているのです。　どこが??　なぜだ???

色々と聞いてみると、どうも出店者同志の”よい情報交換の場になっている”、ということらしい。
どういう情報かというと、各地で開かれる手作り市についてや、作品を展示販売をしてくれるギャラリーについて。
また、そうしたギャラリー運営者がこの催しに来て直接展示販売の交渉が出来たりなどの場になっている様子。

記憶に残っている範囲では私のテントにはそんな話はなく、商品を見て
「綺麗ですねー。」
と言って通り過ぎる人や、メモを取りながら2,3質問をした女性。

それと、
「彫金を教えて欲しい。」
と仰ったご婦人３，４人のグループがあった位でした。

近くで食器やコーヒーカップなどの陶芸作品を販売していた気さくで元気なおばちゃんが私のテントを見に来てくれて、

「全然売れないんです。」

と相談すると、私の作品を見て、

「春日井さん。アンタが来るのはココじゃない!」

（こういうクラフト展ではなく、もっと別の場所、別の販売方法が向いているということらしい）

「以前だったら、私のつてで売ってあげられたけどなぁ。」

結局、2日間の出店で1つの商品も売れず、売り上げは全くのゼロ。

支払った出店料の回収にも至らないという無残な結果となりました。

更に気持ちを落ち込ませたのが･･･

2日目の開催時間が終わった頃、どしゃ降りの雨模様となったのです。
出店者の駐車場は会場から少し離れた場所にあったので、そこまでずぶ濡れになりながらトボトボと歩いて車を取りに行き、設営したテント前まで戻り、一人雨に濡れながらテントの撤収。

雨に濡れた体で車に乗り込み家路へとついたこの時は本当に情けなく、みじめで泣きたい気分になりました。

あぁ、私のお客さんは一体どこに居るのでしょう？

実はこの時、次へとつながることが起こっていたのですが、それは次回のお楽しみ。

春日井利光

むちゃくちゃ忙しい宝飾店の工房で10年の修行の後、独立。
ある二組のご夫婦との出会いをキッカケに、二人で作るマリッジリング（結婚指輪）のプログラムを始める。　お二人の大切な思い出と共に残る結婚指輪の手作りを全面的にサポートしています。